当編集部の調書は、ある時点の出来事ではなく、その出来事に至る構造的な変化を扱うことを編集方針としています。本年表は、調書が扱う主要論点を時系列で俯瞰するための補助資料です。各項目は、関連する一次資料の出典と併せて記載しています。
2020年
1月 — 新型コロナウイルス感染症、国内で初確認
厚生労働省が国内初の新型コロナウイルス感染症患者(神奈川県在住の中国籍男性)を確認したと発表(1月16日)。以後、観光・サービス業への打撃と、リモートワーク・デジタル化への急速なシフトが進行(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」2020年1月16日)。
4月 — 緊急事態宣言を初めて発令
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に発令(4月7日、4月16日に全国へ拡大)。インバウンド観光は前年比で約99%減少(観光庁「訪日外国人消費動向調査」2020年4-6月期)。
9月 — 菅義偉内閣発足
安倍晋三首相の辞任を受け、菅義偉氏が第99代内閣総理大臣に就任(9月16日)。デジタル庁設置とカーボンニュートラル2050年宣言が後の政策の柱となる。
10月 — 2050年カーボンニュートラル宣言
菅首相が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする」と表明(10月26日)。後のエネルギー基本計画(第6次)と再エネ・原子力政策の前提となる(首相官邸「所信表明演説」2020年10月26日)。
2021年
7-9月 — 東京オリンピック・パラリンピック開催
当初予定の2020年から1年延期され、原則無観客で開催(7月23日-9月5日)。経済波及効果の事前推計と実績の乖離は、後の大型イベント経済効果の試算手法に対する検証論点となる(東京2020大会組織委員会公表資料、会計検査院「報告書」)。
9月 — デジタル庁発足
内閣府の外局としてデジタル庁が発足(9月1日)。マイナンバー制度の機能拡張と行政手続きのオンライン化を担う(デジタル庁「設置法」2021年9月1日施行)。
10月 — 岸田文雄内閣発足
菅首相の退陣を受け、岸田文雄氏が第100代内閣総理大臣に就任(10月4日)。「新しい資本主義」と「分配重視」の経済政策が掲げられる。
2022年
2月 — ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー価格高騰
ロシアのウクライナ侵攻を受け、日本もG7と協調した経済制裁を実施(2月24日-)。LNGスポット価格が史上最高値を更新し、電気料金の大幅上昇が始まる(資源エネルギー庁「エネルギー白書」2022年版)。
4月 — 成年年齢引下げ施行
2018年改正民法により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ施行(4月1日)。18歳から契約・ローン契約・クレジットカード作成が可能となる(法務省公表資料)。
5月 — 経済安全保障推進法成立
重要物資のサプライチェーン強靭化、基幹インフラの事前審査、特許の非公開、機微技術の研究機関制度の四本柱で構成される「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」が成立(5月11日、2023年4月段階施行)。
8月 — Rapidus(ラピダス)設立
トヨタ・ソニー・NTT・NEC・ソフトバンク・デンソー・キオクシア・三菱UFJ銀行が出資し、IBMから技術ライセンスを受けて、北海道千歳市で2nm世代半導体製造を目指すRapidusが設立(8月10日、同社プレスリリース)。
12月 — 日銀、長期金利の変動許容幅を拡大
日本銀行が長期金利の変動許容幅を±0.25%から±0.5%へ拡大(12月20日)。実質的な金融引締めの開始と市場で受け止められ、長期にわたる超緩和政策の転換点となる(日本銀行「金融政策決定会合」議事要旨)。
2023年
4月 — 植田和男・新日銀総裁就任
黒田東彦氏の任期満了を受け、経済学者の植田和男氏が日銀総裁に就任(4月9日)。学者出身の総裁就任は戦後二例目。
5月 — G7広島サミット
広島で開催されたG7首脳会議で、AIガバナンス枠組み「広島AIプロセス」が立ち上げられ、後の国際的なAI規制議論の出発点となる(5月19-21日、外務省「G7広島サミット成果文書」)。
6月 — こども家庭庁発足
少子化対策の司令塔として内閣府の外局として発足(4月1日に発足)。「異次元の少子化対策」の予算配分を担う(内閣府「こども未来戦略」)。
7月 — 日銀、長期金利変動許容幅を再拡大
±0.5%から±1.0%へ事実上拡大(7月28日)。市場介入を「めど」の運用に変更。実質的な金利正常化の二段階目の動き。
2024年
1月 — 能登半島地震
石川県能登地方を中心に最大震度7の地震が発生(1月1日)。能登半島の人口減少地域における災害復旧の構造的論点(過疎地のインフラ・医療・住宅再建のコスト負担)が顕在化(気象庁・内閣府「令和6年能登半島地震」関連資料)。
2月 — TSMC熊本工場(JASM)第1工場開所
台湾積体電路製造の日本子会社JASM熊本第1工場が開所(2月24日)。28/22nm、12/16nm世代の量産開始。総投資額は約1.7兆円、政府補助は約4,760億円(経済産業省公表)。
2月 — 日経平均株価、史上最高値を更新
1989年12月29日の終値38,915円を約34年ぶりに更新し、39,098円で取引終了(2月22日、日経新聞社「日経平均プロフィル」)。
3月 — 日銀、マイナス金利政策解除
2016年から続いたマイナス金利政策を解除し、無担保コール翌日物の誘導目標を0~0.1%へ引き上げ(3月19日)。長短金利操作(YCC)も終了。17年ぶりの利上げ(日本銀行「金融政策決定会合」議事要旨)。
4月 — 新NISA制度、本格運用開始
2023年税制改正で導入された新NISA(つみたて投資枠+成長投資枠)が2024年1月から開始、4月時点で口座数が前年同月比で約2倍に拡大。家計金融資産の「貯蓄から投資へ」の構造変化を促す制度設計(金融庁「NISA制度の利用状況」)。
7月 — 日銀、追加利上げ
無担保コール翌日物の誘導目標を0.25%に引き上げ(7月31日)。同時に長期国債の買い入れ減額計画を公表。為替市場で円高方向への急速な調整が発生。
10月 — 石破茂内閣発足
岸田文雄首相の退陣を受け、自民党総裁選で勝利した石破茂氏が第102代内閣総理大臣に就任(10月1日)。
10月 — 2024年衆議院選挙、自公過半数割れ
自民党・公明党の連立与党が衆議院で過半数を割り込み、政策運営における野党との協議が前提となる構造に(10月27日投開票)。少数与党による予算・法案運営の論点(総務省「衆議院議員総選挙速報」)。
2025年
1月 — 日銀、追加利上げ
無担保コール翌日物の誘導目標を0.25%から0.5%へ引き上げ(1月24日)。バブル崩壊後の最高水準。利上げペースは緩慢ながら、長期超緩和からの段階的正常化が継続(日本銀行「金融政策決定会合」議事要旨)。
4月 — 大阪・関西万博開幕
大阪市夢洲で「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催(4月13日)。総事業費は当初想定から約1.5倍に膨張し、公的負担の説明責任が論点となる(経済産業省・大阪府市公表資料)。
7月 — 参議院通常選挙
任期満了に伴う参議院通常選挙(7月20日投開票)。物価高対策、社会保障、安全保障が主要争点。
10月 — TSMC熊本第2工場、量産開始
JASM第2工場(7/6nm含む)が量産開始。九州・福岡県南部の半導体クラスター形成が地域経済構造に影響(経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」関連資料)。
2026年
1-3月 — 第7次エネルギー基本計画策定
2030年・2040年・2050年の電源構成目標と原子力政策の方向を確定(2026年初頭目途)。本誌調書「原発再稼働と脱炭素」で扱う論点(資源エネルギー庁「総合エネルギー調査会」議事資料)。
編集部の調書が扱う2026年の主要論点
- 地方消滅予測の再検証:人口戦略会議の2024年予測(744自治体)と、その後の移住・出生動向の整合性(本誌調書「地方消滅は現実か」)
- 半導体政策の転換点:TSMC熊本第2工場の量産開始とRapidus 2nm試作のタイミング(本誌調書「日本の半導体政策20年」)
- 介護離職200万人問題:2027年制度改正に向けた介護保険制度の構造的限界(本誌調書「介護離職200万人問題」)
- 円の長期下落:日銀利上げサイクルの継続と為替市場での円の位置(本誌調書「円の長期下落」)